iPS細胞技術を応用した医薬品心毒性評価法の国際標準化

ヒトiPS分化細胞を用いた毒性・安全性評価法を開発し、非臨床試験に取り入れることは、ヒトへの評価を現状の臨床試験より前の段階で開始でき、創薬におけるコストの削減、開発期間の短縮が期待できます。我が国では、健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定、平成29年2月17日一部変更)において、「iPS細胞技術を応用した医薬品心毒性評価法の国際標準化への提言」が2020年頃までの達成目標とされています。

PEIJは、各種MEA機器のrawデータを取り込み共通バイナリデータにWindowsパソコン上で変換(変換後のデータフォーマットも合わせて公開)する「MEA Parser」を、New BSD Licenseでの国際公開(Axion BioSystems社Maestro及びAlpha MED Scientific社MED64用を2017年4月3日、Multi Channel Systems社MCS用を2017年8月1日)を行いました。

その結果、「MEA Parser」によりMEA機器のrawデータの有用性を示し、rawデータのデータベースへの格納をデータベースの国際標準化において提言し、支持を得てその下で議論が進んでいます。

ICH E14とS7Bに係る新しいQ&Aのドラフトが公開され、日本では、2020年11月15日までパブコメが行われました。

PEIJは、国のコンソーシアムJiCSAを国立医薬品食品衛生研究所と共に立ち上げ、そのメンバーとして、データシェア等の国際的なルール等の調整、データ解析アルゴリズムの作成・無償公開、JiCSAデータのアーカイブ化の環境づくり等を担いコンソーシアムの下支えを行いました。

  • JiCSAとCiPAの間のデータシェアの国際的なルール(CiPA Guiding Principles)の調整を行い、取りまとめました(2014/12/04)。

  • JiCSA内でのデータ取り扱いのルール(JiCSA general guidelines)の調整を行い、JiCSAのメンバーの了解を得て取りまとめました(2015/05/22)。

  • 『テクニシャン等の若手の人材育成』として、サンディア米国立研究所におけるlab-on-a-chip researchに係るリサーチレジデントの3週間の研修をコーディネートしました(2016/01/25-02/12)。

  • PEIJのラボを、JiCSAの研究者の方々が検証活動等に使っていただけるよう提供いたしました(2016/08-2017/08)。

  • JiCSAの研究者の支援を目的として、データ解析アルゴリズム(iPS Integrated Safety Assessment Tool (iSAT))の作成・公開、JiCSAデータのアーカイブ化の環境づくり等を行いました。サーバ・ストレージ・iSATにつきましては、PEIJとしての役割は完了し、2017/09/06をもちまして、国立医薬品食品衛生研究所に移管いたしました。

  • JiCSAのホームページ、グループウエアー、ビデオ会議、JiCSAの論文の翻訳等のJiCSAの活動の支援を行いました。

  • MEA Parserを国際提供し、データベースの国際標準化の議論に貢献しました。

これらを通じまして、「iPS細胞技術を応用した医薬品心毒性評価法の国際標準化への提言」の実現において役割を果たしました。

データの解析、多角的な視点からの評価を、迅速かつ簡便に行える支援ツール(iSAT)

iPS細胞技術を応用した医薬品心毒性評価法の信頼性等の向上を目指すためには、測定データの自動データ処理に係るアルゴリズムの利用が有効です。また、研究者がデータの解析、多角的な視点からの評価を、迅速かつ簡便に行える支援ツール・システムが有効です。

PEIJは、国のコンソーシアムJiCSAのメンバーとして、平成26年度に解析アルゴリズムの要素開発、平成27年度に解析アルゴリズム等の統合データプラットホーム(iPS Integrated Safety Assessment Tool (iSAT))のプロトタイプの開発を行いました。平成28年2月25日には、iSATのプロトタイプへのご意見をいただく会を開催し、平成28年5月12日の班会議においても、iSATの最新作成状況を報告しました。

また、先のプロトタイプへのご意見をいただく会の際に、iSATの解析アルゴリズムのスタンドアローンな形での研究者(製薬企業等)への提供が新たなニーズとしてあがりました。これは、国プロ以外で取得した実験データについては製薬企業等から外部への持ち出しが困難であることに起因しています。

当該評価法の発展のため、平成28年度は、解析アルゴリズムの国内製薬企業等への配布が可能(スタンドアローンでの使用が可能)となるよう、セキュリティーの対策を講じたユーザーフレンドリーな改善を含め作業を行い、iSATを完成させました。平成29年2月17日には、国内研究班内の検証メンバーに、iSAT の提供開始しました。平成29年3月2日には、国内研究班内のメンバーを対象に、iSATを用いたワークショップを開催しました。

サーバ・ストレージ・iSATにつきましては、PEIJとしての役割は完了し、研究代表者からの指示に基づき、2017/09/06をもちまして、国立医薬品食品衛生研究所に所有権を移転しました。